近鉄鳥羽線加算運賃の終了時期目安を考える

近鉄鳥羽線の加算運賃は50年以上続く

 近鉄鳥羽線(宇治山田~鳥羽)には,1970年の開業以来,50年以上にわたって加算運賃が設定されています。50年も前に設定された金額のままなので,加算運賃は乗車キロ数に応じて10円~30円と少額です。

 近鉄鳥羽線の加算運賃について,回収状況を見てみましょう。

  設備投資額:65億円

  施設使用料等:累計59億円(2018年度:0.05億円)

  加算運賃:累計47億円(2018年度:0.53億円

  基本運賃からの回収:15億円(2018年度:0.25億円)

となっており,2021年度までの回収率は49.7%です。およそ半分は回収できたことになります。

 回収にかかる残り年数を簡単に計算してみましょう。

  残り回収額:65億+59億-47億-15億=62億円

  単年度黒字:0.53億+0.25億-0.05億=0.73億円

  回収年数:62億÷0.73億≒84.9年

となります。開業後50年が経過し,施設使用料等の支払いはわずかで単年度黒字は達成できています。しかし,加算運賃の回収にはあと80年以上かかる計算です...。

近鉄鳥羽線は伊勢志摩観光への依存度が高い

 近鉄鳥羽線は、大阪・京都・名古屋などから伊勢志摩エリアにアクセスする際に利用される路線です。通勤・通学需要も0ではありませんが,普通列車の運転が少なく,特急の運転が多いことからも観光路線の性格が強いと言えるでしょう。

 人気の観光地としては,鳥羽水族館や鵜方駅が最寄りの志摩スペイン村賢島のクルーズ・景観があります。赤福などで知名度がより高い伊勢市駅までだと,大阪や京都からのアクセスでは鳥羽線まで入らないので,加算運賃は回収できません。

 観光業が大打撃を受けたコロナ禍前後での加算運賃収入を見ると,

  2018年度:0.53億円

  2019年度:0.50億円

  2020年度:0.25億円

  2021年度:0.27億円

です。2020年度は前年比で半減しており,観光需要の減少が鳥羽線の需要減少に直結しています。近鉄全線でも旅客運賃収入が減少しましたが,減少率は30%程度だったので,鳥羽線の減少率は近鉄の中でも高かったと言えるでしょう。

近鉄鳥羽線の加算運賃を早期終了させる方法

 現状だと近鉄鳥羽線は加算運賃の回収にあと80年以上かかってしまいます。加算運賃を早期に終了させるにはどうすればよいのでしょうか。

①伊勢志摩観光時の周遊率を高める

 伊勢志摩観光は現在も一定の人気を誇っています。近鉄では観光特急しまかぜの運行や志摩スペイン村でのVtuber連携など,伊勢志摩観光の活性化を図っています。

 ただし,伊勢志摩エリアへの来訪者が伊勢神宮やおかげ横丁などの観光にとどまってしまうと,鳥羽線の加算運賃は十分に回収できません。鳥羽水族館や志摩スペイン村,賢島なども周遊してもらうことで,伊勢志摩観光時に鳥羽線を利用してもらいやすくなるでしょう。

②加算運賃の引き上げ

 鳥羽線は開業から50年以上が経過し,物価が上昇しています。近鉄の普通運賃自体は複数回引き上げられていますが,加算運賃は据え置きです。物価上昇を考慮して加算運賃を引き上げれば,回収を早めることができます。

 例えば,現在10円~30円の加算運賃を,2~3倍に引き上げてはどうでしょうか。同じく加算運賃が設定されているけいはんな線と比較すれば,2~3倍でも割安です。

 1~6km:鳥羽線10円,けいはんな線40円or60円

 7~12km:鳥羽線20円,けいはんな線70円or90円

 13~14km:鳥羽線30円,けいはんな線90円

です。観光需要が中心の路線で,大阪,名古屋などから伊勢志摩エリアへアクセスする際は普通運賃だけでも2460円(大阪難波―鳥羽),特急料金込みだと4100円(同)なので,加算運賃が20円~60円上昇しても需要に影響はほぼなさそうです。

 仮に加算運賃収入が2倍~3倍になれば,

  単年度黒字:1.26億円~1.79億円

  終了時期:49.2年~34.6年

となります。長期間かかることに変わりはないですが,年数を大きく短縮できます。

③回収率7~8割程度での前倒し終了

 鳥羽線の加算運賃のうち,未回収額は約62憶円です。近鉄の鉄道事業は2018年度で1563億円の営業収益があり,62億円の未回収額は決して大きいとは言えません。加算運賃は新路線の建設費等を利用者が多めに負担するという意味がありますが,建設時から鳥羽線を利用している人も少なくなっていると見られ,全額を回収しない段階で終了するのも1つの方法と言えそうです。

 回収率8割で終了とすれば,残額62億円(50%残)を全て回収せず,37.2億円(30%残分)を回収すればOKです。②の加算運賃3倍に引き上げとあわせると,

  37.2億÷1.79億=20.8年

で終了できます。

 現状の加算運賃が少額のため,ダラダラ続けても負担は少ないという考え方もあります。ただ,個人的には50年以上経っていることを踏まえて,早期に加算運賃を終了した方がスッキリするように思います。

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