近鉄けいはんな線加算運賃が高い2(生駒―学研奈良登美ヶ丘の加算運賃終了時期の目安は?)
近鉄けいはんな線の加算運賃が高い(生駒―学研奈良登美ヶ丘駅)
近鉄けいはんな線には,新路線の建設費を回収するための加算運賃が設定されています。加算運賃は運賃が高額になる原因で,関東では東葉高速鉄道などで運賃の高さが問題視されていました。今回は,2006年開業の近鉄けいはんな線東側区間(生駒―学研奈良登美ヶ丘)の加算運賃や終了時期について考えます。
けいはんな線の西側区間の駅は3つです。それぞれ,生駒駅(奈良線との乗換駅)・長田駅(大阪メトロ中央線と接続するけいはんな線の末端駅)までの加算運賃を見てみましょう。
学研奈良登美ヶ丘駅:生駒まで+70円,長田まで+130円
学研北生駒駅:生駒まで+60円,長田まで+110円
白庭台駅:生駒まで+60円,長田まで+110円
となっています。
学研奈良登美ヶ丘~生駒だと,通常の運賃が300円,加算運賃が70円で合計370円になります。わずか8.6kmの区間が370円というのは結構高い気がしますね。
近鉄けいはんな線加算運賃の終了時期目安と回収状況
近鉄けいはんな線の加算運賃は,西側区間(長田―生駒)で回収に時間がかかっています。開業後35年ほど経っているのに,回収率は25%程度という状況です。
けいはんな線の加算運賃の回収状況(2021年度まで)は,生駒―学研奈良登美ヶ丘でもよろしくない感じです。
当初の設備投資額:468億円
施設使用料等:累計292億円(2018年度:19.1億円)
加算運賃収入:累計53.6億円(2018年度:3.8億円)
基本運賃からの回収額:累計7.9億円(2018年度:0.4億円)
累積赤字:468+292-53.6-7.9≒700億円
で回収率は8.1%にとどまっています。
コロナ前の2018年度でも単年度赤字(収入4.2億円,支出19.1億円)なので,計算上はけいはんな線の生駒―学研奈良登美ヶ丘は存続させても永久に加算運賃は回収できないことになります。
ただし,けいはんな線の西側区間は第3セクターの「奈良生駒高速鉄道株式会社」が建設を担いました。近鉄が奈良生駒高速鉄道に施設使用料等を支払っている状況です。施設使用料の支払いを重ねることで奈良生駒高速鉄道の累積欠損金が解消されれば、第3セクターが解散し施設使用料等の金額が激減。長田―生駒間のような単年度黒字は達成できる見込みです。
奈良生駒高速鉄道の累積欠損金の状況
けいはんな線生駒―学研奈良登美ヶ丘の加算運賃終了への第一歩となる奈良生駒高速鉄道の解散はいつ頃になるのでしょうか。
生駒高速鉄道の決算を見ると,2018年度~2022年度は売上高がいずれも19億円程度となっています。近鉄の施設使用料等の支払額とほぼ一致していますね。
純利益は,
2018年度:3.68億円
2019年度:3.27億円
2020年度:3.58億円
2021年度:3.88億円
2022年度:4.12億円
とおよそ3~4億円/年の純利益で推移しています。純利益が割と変動していますが,この辺は金利変動による影響があるのかな?という感じです。利益剰余金のマイナス額は2022年度で20.94億円ですので,
20.94÷3.5≒6
2028年頃には生駒高速鉄道の累積欠損金は解消される見通しです。累積欠損金の解消後も減価償却等の関係で「施設使用料等」は0にはならないですが,生駒―長田の程度の水準になれば加算運賃の回収が進みやすくなります。2018年度の例だと,
生駒―登美ヶ丘の収入:約4.25億円
生駒―長田の施設使用料等:約2.8億円
なので,1.4億円程度の単年度黒字が見込めます。累積赤字が700億円ほどあるので,回収には500年かかってしまう計算です。もっとも,生駒―登美ヶ丘(8.6km)は生駒―長田(10.2km)より距離が短く,途中駅数(2vs3)も少ないです。また,登美ヶ丘への延伸途中で需要予測の見直しに伴うコスト削減を行ったこともあり,西側区間より施設使用料等が少なくなるのではないか,とも考えられますね。そうなると加算運賃の回収は早まりますが,10年・20年程度での回収は難しそうです...。
近鉄けいはんな線加算運賃の回収が遅い理由
近鉄けいはんな線(生駒―登美ヶ丘)の加算運賃は,沿線開発によって進んではいます。しかし,始発駅である学研奈良登美ヶ丘駅の乗降客数は12,410人(2022年)となっています。始発駅のため着席が確保されるメリットがあり,駅前にマンションや戸建て住宅地の開発が近鉄不動産主導で行われているものの,乗降客数は限定的です。
1万人を超える乗降客数があれば,加算運賃の回収が進みやすいのではないかと考えるかもしれません。しかし,けいはんな線の生駒―長田間の新石切(16,187人),吉田(14,389人),荒本(14,024人)を下回る乗降客数となっており,駅周辺の住民が他の交通手段を利用しているケースもあるでしょう。
具体的には,学研奈良登美ヶ丘駅から近鉄奈良線の学園前駅へのバスが豊富に運行されています。その他,近鉄京都線の高の原駅や祝園駅へもバスが運行されており,駅から徒歩5分以上かかるエリアではこれらの駅までバスで行ったり,自家用車で家族に送ってもらったりする方が便利と考えられます。登美ヶ丘駅の徒歩圏内には奈良学園登美ヶ丘(幼稚園~高校)がありますが,学園前駅へのスクールバスがあることが近鉄けいはんな線の利便性の低さを表しているのではないでしょうか。
近鉄けいはんな線(生駒―登美ヶ丘)の加算運賃回収方法
けいはんな線(生駒―登美ヶ丘)の加算運賃を早期に回収する方法としては,以下が考えられます。
・駅前の住宅開発を加速する
・観光需要を創出する
・快速運転を検討する
駅前の住宅開発は,既に近鉄不動産が登美ヶ丘駅を中心に大規模に行っています。ただ,駅徒歩3分以内のような登美ヶ丘駅の利便性が高いエリアには,バスのロータリーやイオンモール登美ヶ丘があり,マンションや分譲戸建ては徒歩5分~10分以上のエリアに多いです。駅から少し離れた住宅が多いと登美ヶ丘駅までバスや自家用車の利用をしやすくなり,それならば学園前を使った方が便利,と考える人が多いのではないでしょうか。
登美ヶ丘駅や学研北生駒駅は,駅近くに木々が生い茂るエリアが少々残っています。権利上の問題等もあるのでしょうが,けいはんな線を使いたくなる駅3分以内のマンション開発などで人口を増やすことが得策でしょう。
また,観光需要が乏しく,日中や土日の利用客が少なくなる傾向があります。登美ヶ丘駅は駅前にイオンがあります。大規模駐車場があるため自家用車での利用者も多いでしょうが,近鉄がらみのイベント開催等を行って利用促進を行えば,一定の鉄道需要押し上げが見込めます。さらに,学研北生駒駅,白庭台駅周辺は比較的閑静なイメージで,新たな建設余地があると考えられます。近鉄のミニ博物館を建設するなどで地道に利用客を伸ばしたいです。他にも,登美ヶ丘車庫でけいはんな線の車両撮影会を実施するなどのイベント開催も考えられますね。
快速運転については,待避設備の関係上生駒―登美ヶ丘間では難しそうです。しかし,生駒―長田間ノンストップの快速運転を実施することは可能でしょう。新石切は2面3線で始発列車の設定が可能です。快速の直後に新石切始発の普通を運転すれば,ダイヤ上の制約をクリアしやすいです。登美ヶ丘,学研北生駒,白庭台の3駅から大阪方面への通勤・通学の際には,生駒駅で奈良線への乗り換え客が生じます。また,自家用車で学園前や生駒に行き奈良線に乗る人もいるでしょう。けいはんな線を快速運転することで所要時間を短縮し,特に本町などの大阪メトロ中央線の駅を目的地とする人々がけいはんな線を使う率を高めたいところです。
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