近鉄運賃値上げ(2023年4月)の背景と経営状況

 近鉄運賃値上げ(2023年4月)の内容

 近鉄は2023年4月1日より鉄道運賃を値上げしました。消費増税を除けば27年ぶりの値上げということもあり,平均で15%を超える値上げです。

 近鉄は奈良県や三重県に多くの路線を有しており,奈良→大阪,三重→名古屋の通勤・通学輸送を担っています。運賃値上げでは通学定期の値上げが抑制されたものの価格維持とはなっておらず,通勤定期も値上げされています。

 具体的な値上げ運賃は次の通りです。

  近鉄奈良→大阪難波:570円→680円

  生駒→鶴橋:360円→430円

  近鉄四日市→名古屋:640円→760円

  桑名→名古屋:450円→530円

通勤・通学はともかく,普段使いの場合,利用者が減少するリスクはあると思います。ただ,コロナ禍が収まりつつある中での運賃値上げのため,ある程度吸収できるレベルかと思います。

 近鉄の資料によると,定期外運賃の改定率は17.2%なのに対し,増収率は14.7%と予想されています。単純計算で,差の2.5%分は利用客数が減少するということでしょう。この程度の利用客減少であれば,値上げ→客数減→値上げ…の負のスパイラルにはならないと思います。

 実際,近鉄が運賃値上げを発表した際,奈良県知事が強く反発する姿勢を見せていましたが,奈良県民や三重県民が強く反発する感じではなかったように思います。27年ぶりだし,設備も古いし,コロナもあったし,仕方ないか...といった感じを受けました。

運賃値上げの背景にある近鉄の経営状況

 近鉄では,沿線人口の減少やコロナ禍により利用客数が減少しており,有利子負債が多いこともあって経営状況が芳しくありません。その中で,鉄道車両の中に車齢が60年近いものが多くなってきており,車両更新に当たってキャッシュが多く必要になったことが運賃値上げの背景です。

 沿線人口の減少については,短期間で改善することは難しく,むしろ中長期的に状況は悪化していくと考えられます。すでにダイヤ改正で減便や減車が進められており,保有車両数の削減に繋げています。

 ただ,人員も含めた設備の縮小をするだけではジリ貧なので,値上げで設備投資を増やすことは有益と言えるでしょう。鉄道車両の更新のみならず,駅設備の改善なども進めて,高めの運賃を払ってでも近鉄に乗りたい,と思う沿線住民を増やしたいものです。そもそも,利用者にとっては,自動車と比べて鉄道は低コストな乗り物です。車両を自分で保有するか,鉄道会社に持たせて多くの利用者で割り勘するかによってコストが違うのは当然ですね。

 奈良→大阪,三重→名古屋の移動では,一部地域を除けばJR西日本より近鉄が優位になっており,値上げを実施しても近鉄を使わざるを得ない沿線住民が多いと考えられます。

 奈良→大阪では,奈良市・生駒市・橿原市という人口が多く大阪のベッドタウン的性格を持つ都市から大阪市内へのアクセスには,近鉄が主に使われる地域が大半です。

 三重→名古屋では近鉄名古屋線とJR関西本線が並走していますが,近鉄は全線複線なのに対して,JRは単線区間があり速達性や運転本数・車両数の点で見劣りします。

 値上げによる増収分で新造される車両の多くは,奈良―大阪間の奈良線など奈良県内の路線に投入される予定です。車齢が古い車両が多いことが主な理由と考えられますが,運賃値上げによる増収効果が大きいドル箱路線への新車投入は,沿線住民への納得感もあるのではないかと思います。

 


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